日本とトルコの政府間協力によって設立された 「トルコ・日本科学技術大学 (Turkish-Japanese Science and Technology University:TJU)」が、 2026–2027年度から新たな教育段階に入る。 首都アンカラで4つの工学系学士課程の 学生募集が行われ、 人工知能(AI)、地震・防災科学などの 博士課程も計画されている。 日本の大学との学術連携や、 日本企業との産学協力も進められており、 日・トルコ両国の科学技術協力を 具体化する取り組みとして注目される。
トルコ・日本科学技術大学(TJU)とは
トルコ・日本科学技術大学は、 日本とトルコの協力により設立された トルコの国立大学である。 科学技術分野の教育、研究、人材育成を中心に、 両国の学術機関や産業界との協力を 推進することを目指している。
大学の公式案内によれば、 2026–2027年度の教育活動は アンカラのOR-ANキャンパスで 開始する計画とされ、 工学分野を中心とした教育課程が設けられている。 日本の科学技術分野における経験と、 トルコの高等教育・研究基盤を結びつけることが、 大学の特徴の一つとなっている。
2013年の首脳合意から2026年の教育開始へ
この大学の構想は、 2026年に突然生まれたものではない。 日本の外務省によれば、2013年5月、 当時の安倍晋三首相とエルドアン首相の間で 署名された戦略的パートナーシップに関する 共同宣言において、 科学技術に関する合同の国際大学の設置に向けて 協力を加速させる方針が示された。
その後、両国の有識者らによる検討を経て、 2016年6月30日にアンカラで 大学設置に関する政府間協定が署名された。 同協定は2016年11月11日に発効している。
なお、2016年の外務省発表では 大学の設置場所としてイスタンブールが 記載されている。 一方、2026年度の大学公式案内では、 アンカラのOR-ANキャンパスにおける 教育開始が案内されている。 本記事では両時点の公式発表を区別して紹介する。
2026年度は工学部4プログラムで学生を募集
TJUの公式FAQによると、 2026–2027年度には工学部に 4つの学士課程が設けられる。 各プログラムの募集枠は20名で、 合計80名の学生受け入れ枠が設定されている。
| 学士課程 | 主な重点領域 | 募集枠 |
|---|---|---|
| コンピュータ工学 | 人工知能・計算モデリング | 20名 |
| 電気電子工学 | 知能センシング・システム | 20名 |
| 環境工学 | 気候・環境システム | 20名 |
| 材料科学・工学 | 宇宙システム・先端材料 | 20名 |
| 合計 | 80名 | |
大学は少人数教育を通じて、 教員と学生の交流、研究活動、 実験室での学習、プロジェクト型教育を 充実させる方針を示している。
ここでいう80名は公表された募集枠であり、 実際の入学者数や在籍者数を示すものではない。
AIと地震・防災科学の博士課程も計画
TJUでは、学士課程に加えて 大学院教育の整備も進められている。 2026–2027年度の秋学期には、 「人工知能・デジタル技術」と 「地震・防災科学」の2つの博士課程で 学生を募集する計画が公表されている。
また、2027–2028年度には、 エネルギー・環境分野の博士課程や、 関連する修士課程の開設も計画されている。 これらの予定は今後変更される可能性があるため、 開設状況や募集要件は大学の最新発表で 確認する必要がある。
地震・防災分野での日・トルコ協力
日本とトルコはともに 大規模な地震災害を経験してきた国である。 そのため、地震現象の解明、防災技術、 都市や社会インフラの災害対応などは、 両国が知見を共有できる重要な研究分野と考えられる。
TJUが地震・防災科学を 大学院の重点領域に位置づけていることは、 科学研究と社会課題への対応を結びつける 教育方針を示すものといえる。
出典: TJU公式・大学院プログラム案内
東京科学大学との全学協定を締結
日本側の大学による協力も具体化している。 2026年6月9日、 東京科学大学(Science Tokyo)は、 TJUのムスタファ・ヴェルシャン・キョク学長一行の訪問と、 両大学間の全学協定締結を発表した。
東京科学大学の発表によると、 開学準備の段階から 環境・社会理工学院の建築学系、 土木・環境工学系、 理学院の地球惑星科学系などの教員を中心に、 双方向の交流が進められてきた。
全学協定の締結は、 個別の研究分野を超えて、 大学間の教育・研究交流を拡充するための 制度的な基盤となる。 ただし、協定の締結と 個々の共同研究プロジェクトの実施実績は 区別して評価する必要がある。
日本企業約60名が参加した産学連携会合
TJUの取り組みは 大学間の学術交流だけにとどまらない。 2026年9月8日、 イスタンブールのTekfen Towerで、 トルコ国内で事業を展開する 日本企業の関係者を対象とした 情報提供・協力会合が開催された。
TJUが9月11日に公表した内容によれば、 この会合は在トルコ日本大使館、 在イスタンブール日本総領事館、 国際協力機構(JICA)の協力によって開催され、 技術・産業分野から 約60名の関係者が参加した。
会合では大学の教育研究体制や 重点研究分野が紹介され、 科学研究と企業の技術ニーズ、 高度人材の育成・活用を結びつける可能性について 意見交換が行われた。
研究成果の社会実装や 産業界との協力を重視する姿勢は、 TJUが研究指向型大学として目指す方向性を示している。 一方、会合の開催だけで、 個別企業との採用契約や共同研究契約が成立したと 判断することはできない。
出典: TJU 「TJU Strengthens Scientific and Technological Cooperation with Japanese Companies」 (2026年9月11日)
国際的な科学技術教育と高度人材育成の可能性
TJUの特徴は、 科学技術教育、大学間協力、 研究開発、産業界との連携を、 国境を越えた枠組みで 推進しようとしている点にある。
AIやデジタル技術、電気電子工学、 環境工学、先端材料、地震・防災科学は、 研究機関だけでなく 企業の技術開発とも関係の深い分野である。 大学における研究成果や専門人材の育成が、 将来どのように産業界と結びついていくかが 注目される。
もっとも、2026年度は 初期の学生募集・教育開始段階にある。 卒業生の進路、日本企業への就職人数、 研究成果の事業化実績などについて、 現時点で確かな数値として示せる情報は限られている。
今後は、大学公式発表や 日本側の参加機関が公表する 教育・研究成果を継続して確認することが重要である。
TORANOMON JAPAN DESKが注目する国際連携
虎ノ門商事株式会社は、 TORANOMON JAPAN DESK(TJD) を通じて、日本と海外を結ぶ ビジネス、教育、技術交流などの 機会づくりに取り組んでいる。
海外の教育研究機関と 日本の大学・企業との協力は、 知識や技術の交流だけでなく、 長期的な人材育成や 新たな事業機会を考えるうえでも重要なテーマである。
TJUの取り組みは、 政府間の教育協力が大学教育、 共同研究、産学連携へと発展していく 一つの事例として注目される。
なお、本記事は公開資料に基づく 情報提供を目的としている。 虎ノ門商事株式会社とTJUとの間に、 公式な提携、大学運営への参加、 学生募集や就職紹介に関する契約があることを 示すものではない。
まとめ|日本とトルコの科学技術協力が新たな段階へ
トルコ・日本科学技術大学は、 2013年の首脳間合意を背景として構想が進み、 2016年に大学設置に関する 政府間協定が署名された。 2026年度にはアンカラで 工学系学士課程の学生募集が進み、 AIや地震・防災科学を含む 大学院教育も計画されている。
東京科学大学との全学協定や、 日本企業関係者が参加した産学連携会合は、 大学が両国の研究・産業界をつなぐ 拠点を目指していることを示す具体的な動きである。
今後、教育活動の実績、 共同研究の進展、 産業界との協力がどのように広がるかが注目される。 日本と海外の科学技術教育を結ぶ取り組みとして、 引き続き公的機関と大学の発表を確認していきたい。
参考資料・一次情報
- 日本国外務省: トルコ・日本科学技術大学設置協定の署名 (2016年6月30日)
- 日本国外務省: トルコ共和国基礎データ (設置協定の発効日を確認)
- TJU:2026–2027年度入学案内 (2026年度情報)
- TJU:Frequently Asked Questions (教育課程・募集枠)
- TJU:Graduate Programs (大学院教育計画)
- 東京科学大学: TJU学長一行の訪問と全学協定 (2026年6月9日)
- TJU:日本企業との科学技術協力会合 (2026年9月11日)
本記事の情報確認日:2026年10月14日。 計画段階の内容は、 大学・関係機関による公表時点の情報です。 最新の募集状況や教育課程については 各公式サイトをご確認ください。